待ち合わせの星に来ない

感性のリハビリ

中村佳代『緑色音楽』

タイトルの緑色はグリーンリボンという臓器移植の普及のシンボルからきており、この映画はそのキャンペーンの一環で作られたもの。だからたくさんの人が見られるようにしばらくYouTubeで見られるようになっていて、結局公開が終わる間際になってやっと見た。

 

そういう作品なので、セーラー服を着てひまわりを持った可愛い後輩が「臓器移植医療のシンボルマーク」などと耳慣れない言葉を口にしたりはするけれど、映画を通してメッセージの押し付けはあまり感じず、なぜならあくまで啓発を着地点としているからでしょう。

主人公が臓器提供する側でもされる側でもなく、幼い頃に亡くした父がどうやら臓器提供をしたらしいということを浪人生の今ひとりで知るという絶妙な立ち位置、そこに配置されたのが村上虹郎というのもとても良い。彼が持つ自分を持て余し気味な青年感がこの話にちょうどよい。

 

劇中でもそういったシーンがあったけれど、自分の大切な人がその選択をしたとき、丸をつけるのは私じゃなくてもカードを提示するのは私になるはずで、自分はそれをできるだろうか。もちろんその逆も然りで、私は私の大切な人にGOサインを出させることを背負わせてよいのだろうか。

もちろんすぐに答えは出ないけれど、そういうことを考えさせることがこの映画のゴールで、なるほどなるほど観てよかったな、考えの種を持てたな、オダギリジョーはやっぱりかっこいいな、なんて思いながらホームページを見ていたら「REVIEW」欄にあった大下ヒロトのコメントにぶん殴られた。

僕は昔から臓器を提供するにチェックしていたのですが、僕の母親は「絶対に臓器提供は許さない。少しでも生きていてほしい」と言いました。これは僕1人で考えることではないと思いました。いくら自分が臓器提供をしたいと思っていても、家族が納得しないとそれは臓器提供にはならないからです。けど僕は臓器提供の事をもう一度考えることが大事なんだと思います。

なんというストレートさ。この映画が多分伝えたかったものが剥き出しで言葉になっているよ。彼はスピンオフで学生時代の父を演じた若い俳優。この人のことを初めて知ったけど好きになってしまった。

 

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